Interdisciplinary Perspectives (IP)
本IP領域では、限られた資源の中で誰もが自由意志で最良の人生を選べる社会をどうデザインするかを考究します。市場の自律性を尊重しつつ、効率的で公正な取引を支えるルール形成としてのガバナンスを理解し、経済学・法学・政治学・国際関係の視点から制度の役割・課題・相互作用を学びます。
世界の多くの人々は市場経済のもとで生活しています。価格を考慮しつつ、食料、衣服、家電、株式などを売買しています。一方、政府がすべての市民の経済活動を指示することも理論上は可能ですが、今日ではそのような全体主義的体制は機能しないことが明らかになっています。その根本的な理由の理解は重要です。
それでも市場経済が適切に機能するためには、政府や関連する専門団体、さらには司法制度によって、基本的なルールが確立されていなければなりません。少なくとも、財産権(property rights)が確立される必要があり、より一般的には法の支配(rule of law)が保証されねばなりません。どのような法律や規則が必要なのでしょうか。
自動車の輸出入など国際的な経済活動においては、世界政府が存在しないにもかかわらず、どのように取引の履行を確保できるのでしょうか。とりわけ、国家間で互いに報復措置を取り合い、自由貿易を阻害することがあります。自由貿易は本来、世界中の人々に利益をもたらすはずのものであるにもかかわらずです。このような国際的対立をどのように抑制できるのでしょうか。
報復のエスカレーションが戦争の引き金になり得ることを考えると、これは重要な問題です。こうした状況で、国際機関はどのように統治されるべきでしょうか。特に、途上国と先進国の声をどのように調和させることができるかは大きな課題です。これはグローバル・ガバナンスの問題として知られています。
市場経済の一部では、さらなる公共の関与を必要とします。なぜなら、ある個人や企業の市場行動が他者に大きな不利益を与える場合があるからです。典型的な事例として、化学工場による水質汚染、ウナギなど絶滅危惧種の乱獲、地球温暖化を引き起こすCO₂排出、そして広範な貧困に起因する社会的不安などが挙げられます。これらに対処する場合でも、政府が国民の活動を強く統制することになりかねないよう、政策のデザインには慎重な検討が求められます。
企業内部では、労働や部品など市場を介さない取引が存在します。株主や経営者は、これらの非市場的取引が最適になされるために、どのように企業を日々経営すべきでしょうか、そして長期的にはどのようなルールで統治(コーポレート・ガバナンス)をすべきでしょうか。
これまで蓄積されてきた知見に基づいた的確な制度や政策の実現自体も重要な問題です。社会科学者が上述のような諸問題に対して最適な制度を設計し提唱できれば、政治家はそれを実現するための関連法や規則を制定すべきでしょう。そしてそれらの正統性を担保するために、選挙で選ばれた政治家が民主的に法律や規制を承認することが求められます。
しかし、民主主義はどのように確立され、維持されるのでしょうか。また、民主主義のもとでも、政治家は常に社会科学者が考案した最善の制度設計に賛成票を投じるのでしょうか。もしそうでないならば、政治制度をどのように改善すべきかという問いが生じます。
植田 健一 Kenichi Ueda
IP領域主査(Governance & Markets)
東京大学大学院公共政策学連携研究部 教授
植田 健一 Kenichi Ueda
東京大学大学院公共政策学連携研究部 教授
Andrew Shields Griffen
東京大学大学院経済学研究科 准教授
高木 悠貴
東京大学大学院経済学研究科 講師
青木 尚美
東京大学大学院公共政策学連携研究部 教授
向山 直佑
東京大学未来ビジョン研究センター 准教授
※ 教員の所属・役職は2025年12月26日時点のものです。
※ 各授業の担当教員等に関する情報は確定次第掲載します。
カリキュラムは、学生が幅広い学術的な知識を身につけ、デザインによる創造の幅を広げられるように、様々な形の授業を組み合わせて構成されています。主要な科目群は、 Interdisciplinary Foundations (IF)、 Interdisciplinary Perspectives (IP)、 Change Maker Design Projects、 8 Track Design Series、 Off-campus experiences (internships)、 Viewpoint Series、 Capstone Projects (Group/Solo) などです。
カリキュラムの全体像については、Program ページをご参照ください。